陶磁器に見られる絵文様


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絵文様



動物文様

鮎(あゆ)   鮎はサケ目アユ科の淡水魚で特に日本の美しい名産魚として知られています。
稚魚期は海へ下って越冬し、初春に川を上って急流に棲み、秋に川の中流域で産卵します。
川底の石に付く珪藻類を食して成長します。
寿命が普通は一年である事から「年魚」と書きますが、中には越年鮎も知られています。
又、鮎の肉は香気を帯びている事から「香魚」とも書かれます。
兎(うさぎ)   兎はウサギ目の哺乳類の総称です。
波兎は琵琶湖の竹生島をモチーフにしているともされ、
謡曲『竹生島』の「月海上に浮かんでは兎も波を走るか面白の浦の気色や」に因みますが、
鰐鮫を欺いて海を渡ろうとした因幡の白兎のイメージも投影されていると考えられています。
宋への留学を終えて帰路についた大応国師の船が嵐に遭遇した際に白兎が波上を疾駆して、
水路を開き窮地を脱したという説話も知られており、波兎との関係が注目されています。
又、波兎は火伏せの神としても知られています。
火を扱う陶工間だけでなく、当時の人々の火伏せの神への信仰心も強い背景となっています。
月と共に描かれて不老不死や再生の象徴として古くから中国でも愛好されてきました。
雁(かり)   雁はガンカモ科の鳥の総称です。
日本では渡り鳥として秋の彼岸に飛来し、春の彼岸に北へ帰るとされています。
雁行というように飛ぶ時に横や鉤形に列を作るのも特徴です。
芦と共に描かれた芦雁文も盛んに用いられました。
鷺(さぎ)   鷺はコウノトリ目サギ科に属する鳥の総称です。
飛翔する時に頚を乙字形に曲げ、繁殖期には頭の羽毛が後方に長く伸びます。
肥前磁器の文様の主題として採り上げられているのは羽毛が純白の白鷺です。
鹿(しか)   鹿はシカ科の哺乳類の総称でアジア東部に広く分布します。
日本では北海道から沖縄まで生息します。神の使いとされ、神社に飼われる事もあります。
鹿は中国で「禄」と同音とされ、財富を寓意しました。
1000年で蒼鹿、1500年で白鹿、2000年で玄鹿になるという伝説があり、
古くから長寿の象徴として親しまれてきました。
日本においては平安時代に鹿と紅葉を組み合わせる文様が生まれ、
後に和様意匠として長く用いられる事になります。
獅子(しし)   獅子は熱帯動物ライオンですが、古くは猪や鹿と区別する為に唐獅子ともいわれました。
日本に居なかった為、中国から伝わってきた絵画・文様を見て知った動物です。
次第に和風化して多くの絵画や工芸品に描かれるようになりました。
その為、文様として描かれた獅子は実際のライオンとはかなり異なるものとなっています。
牡丹と組み合わせた獅子牡丹、玉と戯れる玉取獅子で用いられる事が多いです。
「牡丹に唐獅子」とは配合の良い例えを指します。
日本において雄健な唐獅子は桃山時代の武将に愛好され、
狩野派により障壁画や屏風絵に描かれました。
鶴(つる)   鶴はツル目ツル科の鳥の総称です。
古来、長寿の象徴として尊ばれ、吉祥の鳥として中国や日本で特別扱いされました。
沼地、平野、海浜等に群棲して地上に営巣し、産卵します。
雌雄共に行動するとされ、相手に事故等がない限り、一生を添い遂げるといわれます。
文様としての鶴にも双鶴で描かれているものは多く見られます。
鳳凰(ほうおう)   鳳凰は梧桐(青桐)に宿り、竹の実を食し、醴泉水を飲むといい、聖天子の瑞兆として
出現すると伝えられる伝説上の神鳥です。雄を鳳、雌を凰と分けて称する事もあります。
体は前半身が麒麟、後半身は鹿、頸は蛇、尾は魚、背は亀、頷は燕、嘴は鶏に似ます。
羽は孔雀のように五色絢爛で声は五音に中って気高いとされます。
古来中国では龍、麒麟、亀と共に四瑞の一つとして尊崇されました。
又、中国で龍は皇帝、鳳凰は女王の象徴としても知られます。
仁愛と慈悲の瑞兆として古来より瑞祥文様として好んで用いられました。
梧桐に宿るとされる為、桐と共に描かれる事が多く、牡丹、菊、龍等とも共に描かれます。
龍(りゅう)   龍は水中に棲んで空を飛翔し、雲を起こして雨を呼ぶという想像上の神獣です。
古来中国では鳳凰、麒麟、亀と共に四瑞の一つとして尊崇されました。
又、中国で龍は皇帝、鳳凰は女王の象徴としても知られています。
1297(大徳元)年、一般庶民の使用する龍爪は四爪とする建白が行われました。
1314(延祐元)年、元王朝は五爪二角の龍を皇帝及び、宮廷の象徴文様に決定しました。
明・清王朝もこの制度を継承しますが、日本には五爪龍の思想は入りませんでした。
独裁と虚栄の権力が強く、上ばかりを見て頭を下げる事を好まない君主に喩えられる龍を
威徳があり、丸く支配する事ができる名君であって欲しいと願望する庶民の心を反映して
龍を丸く描いた団龍文様が描写されたと伝えられます。


植物文様

紫陽花(あじさい)   紫陽花はユキノシタ科の落葉低木で原産国は日本が知られています。
六〜七月頃、球状の集散花序に四枚の蕚だけが発達した不実の実(装飾花)を多数付けます。
花色は白、青、赤、紫等、様々にありますが、
順々に色彩の変化するところから「七変化」の名称も知られています。
語源は「あづさい」で「あづ(集まる)」+「さあい(真藍)」青い花が集まって咲く
という事に由来しています。花色の変化から「移り気、心変わり」等の花言葉もあります。
尚、紫陽花は長崎市花にも指定されています。
梅(うめ)   梅はバラ科サクラ属の落葉高木で原産国は中国が知られています。
早春、葉に先立って色彩豊かに花を開きます。
花は五弁で色は白、紅、薄紅等があり、身近でおめでたい植物として好まれました。
香気が高く、夜に香るともいわれます。
日本にも奈良時代迄には中国から伝えられたとされています。
その美しさを高潔な花として君子に例えた四君子(菊・蘭・竹・梅)にも含まれています。
君子とは徳が高くて品位の備わった人を指します。
又、三友(松・竹・梅)、五友(菊・蘭・竹・梅・蓮)の一つとしても知られています。
文様に知られる「梅に鶯」とは取り合わせの良い事の喩えとされています。
楓(かえで)   楓はカエデ科の落葉高木で原産地は北半球が知られています。
四〜五月頃、黄緑色や暗紅色の多数の小花、後に果実を付けます。
紅葉とは秋に木の葉が紅変する事を指し、美しい楓の紅葉がそのまま植物名になりました。
紅葉狩り等、古くから秋の風物詩として欠かせません。
紅葉はカナダの国章にも指定されています。
蕪(かぶ)   蕪とはアブラナ科の一・二年草です。
日本にも古く中国から伝えられ、野菜として栽培されています。
根の球形部は多肉・多汁で白色の他に紅色等もあり、品種によって多様です。
春、花茎の先に黄色の十字形の花を総状に開きます。
菊(きく)   菊はキク科キク属の多年草で原産国は中国が知られています。
品種が多く、花色は白、黄、桃、紅等、様々にあり、長生きの薬と信じられていました。
中国では早くから観賞の対象とされ、日本にも奈良時代末期に中国から伝えられました。
高潔な花として君子に例えた四君子(菊・蘭・竹・梅)にも含まれています。
君子とは徳が高くて品位の備わった人を指します。
又、五友(菊・蘭・竹・梅・蓮)、三香(菊・蘭・水仙)の一つとしても知られています。
皇室の紋章(十六の重弁)に採用される等、その美しさは高く評価されました。
桐(きり)   桐はゴマノハグサ科の落葉高木で原産国は中国が知られています。
五月頃、芳香ある淡紫色の鐘状花が円錐状に集まって開きます。
日本でも各地で栽培され、材は軟質の色白で狂いが少ないです。
耐火性があり、吸湿性も少ない為、琴、箪笥、家具材、下駄、箱等に用いられます。
桐文は高貴な文様であり、菊と共に皇室の紋章とされています。
公家や武将は下賜される事によって使用する事ができました。
鳳凰は梧桐(青桐)に宿るとされる為、共に描かれる事が多いです。
柘榴(ざくろ)   柘榴はザクロ科の落葉高木で原産地はペルシア・インド地方が知られています。
六月頃、鮮紅色五弁の筒状花を開きます。果実は秋に熟し、大きな球形を呈します。
果皮は黄紅色で黒斑があり、熟すると裂けて中にある多数の種子を一部露出します。
果樹や観賞用として世界各地に広まり、日本には平安時代に渡来しました。
中国では多産を意味する吉祥文様として扱われています。
日本でも鬼子母神の象徴として吉祥果とされています。
鬼子母神とは王舎城の夜叉神の娘で千人(万人とも)の子を産みましたが、
他人の子を奪って食したので仏は彼女の最愛の末子を隠して戒めました。
以後、仏法の護法神となり、求児・安産・育児等の祈願を叶えるといいます。
棕櫚(しゅろ)   棕櫚とはヤシ科シュロ属の常緑高木の総称で特に日本原産のワジュロを指します。
高さは5b以上になり、幹は直立して枝がなく、麻のような毛で覆われています。
頂上に群生する葉は長い柄をもち、掌状に深裂して大きいです。
雌雄異株で五〜六月頃、葉の付け根から分岐した花序を生じ、淡黄色の小花を多数付け、
後に青黒色で球形の実を結びます。雌花は小球状の核果を結びます。
材は柱や器物、毛苞は縄・刷毛・箒・たわし、葉は夏帽子・敷物・うちわ等とされます。
水仙(すいせん)   水仙はヒガンバナ科の多年草で原産地は地中海沿岸が知られています。
シルクロードを経て唐の時代に中国へ伝わり、日本には平安時代に齎されました。
十二月〜三月頃にかけて六枚の花被をもつ花が咲き、新春の瑞兆花ともされています。
春に先駆けて清楚で香しい花を咲かせる水仙は雪中に毅然として咲き、
「雪中花」の名でも知られる冬の代表的な花です。
三香(菊、蘭、水仙)の一つとしても知られています。
福井県越前岬の群生は有名で福井県花に指定されています。
竹(たけ)   竹はイネ科タケ亜科の多年生常緑木本で原産国は日本・中国が知られています。
冬も緑を保つ生命力からおめでたいものとされています。
その美しさを高潔な花として君子に例えた四君子(菊・蘭・竹・梅)にも含まれています。
君子とは徳が高くて品位の備わった人を指します。
又、三友(松・竹・梅)、五友(菊・蘭・竹・梅・蓮)の一つとしても知られています。
語源は成長が早く「丈」が伸びるところからの転とされています。
竹に雀、竹に虎の文様は古くから親しまれてきた題材の一つです。
椿(つばき)   椿はツバキ科の常緑高木・低木で原産国は日本が知られています。
花には一重・八重・斑等の種類があり、普通は早春に華やかな花を付けます。
室町・桃山時代に盛んになった茶道や華道と共に大きな流行を見るようになりました。
特に茶道では炉の花として椿を使用する例が江戸初期頃から増え始め、
現在は茶花の主役として茶道とは切り離せない花となっています。
椿の花は救急薬・健康茶、種子は灯火用・外用薬・椿油、
堅い材は武器として利用される等、生活に密着したものでした。
中国では不老長寿・子孫繁栄を表す吉祥文様としても知られています。
鉄線(てっせん)   鉄線はキンポウゲ科の落葉蔓性草で原産国は中国が知られています。
茎が細くて硬く、鉄線のように強いという事が名称の由来とされています。
葉は対生で葉柄は他物に絡み付き、初夏に大きな白色や淡青紫色の六弁花を開きます。
日本にも江戸時代には中国から伝えられたとされています。
芭蕉(ばしょう)   芭蕉はバショウ科の大形多年草で原産国は中国が知られています。
高さ5b内外に達し、葉鞘は互いに相擁して直立しています。
葉は長さ2b近くの長楕円形で長柄を持ち、支脈に沿って裂け易いです。
夏秋に長大な花穂を出し、帯黄色の単性花を段階状に輪生します。
茎・葉は煎じて利尿、水腫、脚気等に服用され、根も薬用とします。
松(まつ)   松はマツ科マツ属の常緑高木で原産国は日本・中国が知られています。
北半球の温帯を中心に約1000種が分布しています。
葉は針状で春に球状の雌花と雄花とが付き、黄色い花粉が風に飛びます。
日本には赤松、黒松、五葉松、這松、琉球松、朝鮮五葉等があり、
古来より神霊の憑代とされ、長寿、不変、節操を象徴するものとして尊ばれました。
正月の松飾りや門松等、親しみの深いおめでたい植物です。
果実である松毬は多数の硬い鱗片から成り、「まつぼっくり」とも呼称されています。
種子は食用、材は薪炭・松明・建築・パルプ等に広く用いられ、松脂も取る事ができます。
三友(松・竹・梅)の一つとしても知られています。
桃(もも)   桃はバラ科の落葉小高木で原産国は中国が知られています。
四月頃、淡紅や白色の五弁花を開き、果実は大きな球形を呈して美味です。
古くから日本に渡来し、各地で栽培されました。
白桃、水蜜桃、椿桃(油桃)、黄桃、蟠桃、観賞用の花桃等、品種が多いです。
中国では長寿を表すもの、日本では『古事記』に「いざなぎの命」が
悪鬼を桃で追い払ったという神話があり、悪鬼(邪気)を払う力をもつ霊果とされました。
柳(やなぎ)   柳はヤナギ科の落葉(一部常緑)高木・低木で原産国は中国が知られています。
中国中南部、揚子江河畔に多いとされ、川柳、行李柳、垂柳等の種類があります。
世界では3300種以上にも達し、寒帯から熱帯まで及びますが、主に北半球に生じています。
日本でも北海道から九州まで分布し、50種類以上を数えます。
古くから庭園樹、街路樹、建築物の添景として植えられ、親しまれてきました。
柳は古来、美人を形容する言葉に用いられる事が多いです。
柳のように細くてしなやかな腰つきを「柳腰」、柳の葉のように細くて美しい眉を「柳眉」、
長くて美しい頭髪を「柳髪」、しなやかな姿を「柳態」と例えています。


人物文様

唐子(からこ)   唐子とは中国の子供という意味で中国風の服装や髪形をした童子を指します。
嘗ての中国では多子の男児に恵まれる事は大きな幸福で唐子文様の成立は
子に恵まれて後継を得たいという願望によるものと考えられています。
寒山拾得(かんざんじっとく)   寒山拾得とは寒山と拾得の飄逸な姿を組み合わせた中国・日本画の題材の一つです。
寒山と拾得は唐代の僧で天台山の国清寺に参禅し、豊干禅師に師事したと伝わります。
両者とも生没年は未詳で寒山は文殊の化身、拾得は普賢の化身と称されました。
又、その挙動はすこぶる奇矯であったとされています。
この画題は宋代以来、好んで取り上げられた為、図様には幾つかの類型を生じました。
寒山が経巻を披き、拾得が箒を持ち、表情に独特の笑みを浮かべる図様が多いです。
禅画の好画題、文芸や芸能の題材ともされました。


其の他の文様

扇(おうぎ)   扇には摺り畳めない団扇のグループと摺り畳む事のできる摺扇のグループがあります。
団扇でも唐団扇と呼称されている軍配団扇は武将が兵団を指揮したりする時に用いたり、
相撲節会時に行事が使用する事から力強い勝利の象徴とされ、
文様としての形式を整えていったものと考えられています。
一方、摺扇は中国起源の団扇から派生し、日本独自の発想に基づいて生まれました。
祝賀場には付き物で好んで文様に採用された背景には開いた時の末広がりの優美な形が
未来の繁栄や上昇に通じる吉祥の象徴として捉えられた為と考えられています。
赤壁賦(せきへきのふ)   赤壁賦とは北宋時代の蘇軾(1036〜1101)が詠んだ代表作です。
赤壁とは湖北省赤壁市の西に位置する赤壁の戦いで有名な古戦場(武赤壁)ですが、
蘇軾が赤壁賦を詠んだのは湖北省黄岡市の赤鼻山(文赤壁)です。
一説には赤鼻山を誤って赤壁と取り違えた為とも伝えられています。
赤壁賦は「前赤壁賦」と「後赤壁賦」の二編から成る詩歌です。
前編は1082年7月16日に赤壁で舟遊びをして自然の悠久さと人間の命の儚さを対比し、
自然の美しさを楽しむ喜びを叙情豊かに表現した名文です。
後編は3ヶ月後に冬の赤壁を再訪して遊びを記したもので
自然の変化と人間の存在について表現した名文です。
壷々(つぼつぼ)   壷々とは文様意匠の一つで三千家家元の替紋として知られています。
京都市伏見区の伏見稲荷大社に信仰の厚い元伯宗旦が初午の日に境内で売られていた
土産物の田宝(伝法)を紋に好み替えたもので三千家個々に組み方が異なっています。
田宝とは底が平らで中ほどに膨らみをもった口が狭い李に似た形を呈した土器です。
粗塩を入れて火中に投じて焼塩(精製塩)を作るのに使用されました。
小振りのものは幾つかを掌に入れて転がすと「ツボツボ」という音を発する事から
壷々とも呼称され、子供用の玩具とされました。
名称の由来は一説に大阪市此花区伝法町で作られた事によるといいます。